アフリカで活動するNGOのデータベースおよびアフリカのエイズ問題に関するニュース・情報データベースです。収録されたデータ更新の連絡、最新情報の紹介をAJF事務局あてにお願いします。
国連が季刊で発行している「Africa Recovery」の最新号(Vol.18 No.1 2004年4月)にWHOの3 by 5キャンペーンに関する記事が2本掲載されています。
Massive AIDS campaign gears up
But financing for treatment remains short of needs
By Michael Fleshman
http://www.un.org/ecosocdev/geninfo/afrec/vol18no1/181aids1.htm
Moving therapy to frontline of AIDS war
Wider drugs provision can prolong lives, avert economic collapse
By Daphne Topouzis
http://www.un.org/ecosocdev/geninfo/afrec/vol18no1/181aids2.htm
ここでは、Massive AIDS campaign gears upを概訳で紹介します。
10年ほど前、HIVに対する有効な治療法(ARVとHAARTのこと)が開発され、豊かな国々(先進諸国)の人びとは高価な新薬を使って生き延びることができるのに、貧しい国々(途上国)の人びとは薬を手に入れることができずに、数百万の単位で亡くなってきた。
途上国の人びとがエイズ治療を受けることができないことは「世界規模の保健に関わる緊急事態」、と宣言したWHO(世界保健機関)の李事務局長は、2005年までにアフリカ諸国の200万人を含む300万人にARV治療を施すという3 by 5キャンペーンを開始した。
現時点で、早急にARV治療を必要とする人びと、すなわちすでにエイズを発症している人びとは世界中に600万人いる。ARV治療は延命治療ではあってもエイズを完治させるわけではないので、一生涯、ARV治療を続けなくてはならない。「数百万人にARVを供与するために、我々の考え方、やり方を根本的に変えなくてはならない」と李事務局長は強調する。「これまで通りのやり方では通用しない。これまで通りのやり方というのは、日々数千人が亡くなっていくのを黙視することにほかならない」というのである。
アフリカ諸国の3000万のHIV陽性者にとって、これは生か死かの問題だ。人が生来持っている免疫力を奪うHIVは、サハラ以南アフリカ諸国においてこれ以上ない衝撃を与えている。貧しく、公共医療システムが貧弱で、スティグマへの恐れと、検査そして治療費用の高価さのため、サハラ以南アフリカ諸国ではほとんどチェックを受けることもなくHIV感染が拡大した。国連の推計では、400万人がARV治療を必要としているのに、実際に治療を受けているのは10万人に満たない。
3 by 5キャンペーンは、SARSへの緊急対策をモデルにしている。検査、医薬品の流通そして治療のための施設を設けようとする国々に、WHOの技術専門家たちが派遣されて政府を支援していくことになっている。同時にWHOはより標準化された簡単な治療指針を開発し、10万人を新たにヘルス・ワーカーとして訓練し、さらに治療薬の品質と供給および価格に関する情報センターを設けようとしている。
2年間で、ARV治療を受ける人びとの数を10倍にしようというのだから、何とも野心的な試みと言うしかない。ウガンダのNGO・保健に関する人権行動グループ(Health Rights Action Group)のロビーイング・アドボカシー担当者でGFATM(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)の理事でもあるミリー・カタナさんは「このキャンペーンは、アフリカの勝利と言える」と語っている。「何年間も、私たちは援助機関、世界規模の製薬企業、いくつかの民間財団そしてNGOに向かって治療は可能だと訴えてきた。そのたびに治療ができない言い訳ばかりを聞かされてきた」というのである。今、議論は貧しい人々を治療するかどうかではなく、どうやって治療するのか、に移っている。「アフリカ諸国のHIV陽性者自身の闘いが突破口を開いたのです」と彼女は強調する。
治療は「可能でなければならない」
しかし、一体どうやって治療を可能にするのか?この2月、Africa Recoveryのインタビューに応じた、WHOの3 by 5キャンペーン担当者であるパウロ・テイケイラ博士は、3 by 5キャンペーンを成功させるために克服しなければならない技術的、財政的、政治的困難の巨大さを十分認識していた。「現在30万人しかいない途上国でARV治療を受けている人の数をほんの2年で10倍にしようというのですから、予想もできない困難が生じてくるでしょう」と彼は言う。「各国の政府、市民社会、援助機関、国際機関、製薬会社、NGO、そしてWHOがこれまでになかったくらいに協調して対処しなければいけません。数多くの人びとの命が、このキャンペーンの成功にかかっているのですから、治療は可能でなければならないのです」と続けた。
WHOに来る前、ブラジルの模範的な国家治療プログラムを構築したテイケイラ博士は、この世界規模の取り組みを可能にした一連の要素を列挙した。
「私たちは何をなすべきか、どうやればよいのか、さらにはそれが可能であることを知っているのです。残っているのは意志の問題だけです」とテイケイラ博士は語った。
WHOの推計では、現在取り組まれている治療プログラムによって2005年末までに途上国でARV治療を受ける人の数は、30万から935,000へと増加する。3 by 5キャンペーンはこの数をさらに200万増加させようというものなのだ。テイケイラ博士はこれからの2年間に少なくとも50億米ドルの新たな資金が必要と強調した。しかも、この資金調達はキャンペーンの出発点に過ぎない。
米国の取り組みが鍵
HIV/AIDSに関する取り組みへの資金供給について詳細な調査を行った米国のヘンリー・J・カイザー家族財団(the Henry J. Kaiser Family Foundation)ののジェニファー・ケイツ(Jennifer Cates)エイズ政策研究員によると、2003年度に貧しい国々で実施されたエイズ・プログラムの資金のほぼ半分はODAによる二国間援助によるものだった。途上国自身による資金が25%で、ほぼ同じ割合の資金がGFATMや世界銀行、民間財団や国連機関から拠出されていた。
Sources of funding for global HIV/AIDS, 2003 ($ mn)
| US government, bilateral | 852 |
| Other governments, bilateral | 1,163 |
| Global Fund (HIV/AIDS only) | 547 |
| UN agencies | 350 |
| World Bank (grant equivalent) | 120 |
| NGOs/private donors | 200 |
| Affected country governments (domestic) | 1,000 |
| Total |
4,232* |
* Budgeted; actual spending totaled $3,600 mn
彼女は、「近年、全ての資金拠出を合わせると資金は確実に増加していますし、この傾向は今後も継続していくものと思われます。しかし、3 by 5キャンペーンをさておいても、資金額そのものはUNAIDS(国連合同エイズ計画)が見積もった必要額を満たしていません」と強調した。
2月23日、米政府がPresident's Emergency Programme for AIDS Relief (PEPFAR)を開始したことで、エイズ治療に向けられる資金が劇的に増加した。このプランは、5年間に150億米ドルを、アフリカ12カ国(ボツワナ、コートジボワール、エチオピア、ケニア、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、ルワンダ、南アフリカ共和国、タンザニア、ウガンダ、ザンビア)およびカリブ海の2国(ハイチ、ガイアナ)でのエイズ治療に投入し200万人にARVを供与しようというものである。
アナリストたちによると、米国は今後5年間に50億米ドルをおよそ100カ国対象の二国間援助によるエイズ・プログラムに投入し、少なくとも2億米ドルを毎年GFATMに拠出するという。従ってPEPFARは、さらに90億米ドルを拠出しようというものであり、このプログラムの実施責任者であるランダル・トビアス氏言うところの史上空前の保健分野でのイニシアティブへの資金拠出なのである。しかも、資金の三分の一、50億米ドルは性的行動抑制推進のために使われるという。
元製薬企業イーライ・リリーの社長だったトビアス氏は、さらに、初年度の拠出金3億3500万米ドルは13万7000人に5年間にわたってARV治療を施すために投入されるとアナウンスしている。2004年度にPEPFARを通して拠出される24億米ドルは2002年度に全ての途上国でエイズ・プログラムに投じられた資金とほぼ同額なのである。
二国間援助と国際的な危機
計算上では、設定された期間目標は違うものの、PEPFARだけで新たに200万人へのARV治療実施という3 by 5キャンペーンの目標を達成することになる。WHOの当局者たちは、キャンペーン目標達成への大きなステップとして米国のイニシアティブを歓迎している。しかし、国連事務総長アフリカ・エイズ問題特使、スティーブン・ルイス氏を含む多くのコメンテーターが、国際的な危機に対して二国間援助で対応することの有効性に疑問を投げかけ、むしろGFATMへの拠出金を増やすよう呼びかけている。
ルイス特使はAfrica Recoveryに次のように語った。二国間援助を通して治療と予防のプログラムに資金が投入されていくこと自体は問題ではない。1セントでも多くの資金が投入されることは、望ましいことだ。しかし二国間援助には重大な問題がある。一つに、援助国が対象国を選ぶということだ。資金を切望している国が対象とされないことも起こりうる。実際、スワジランド、レソト、マラウイ、ジンバブエといった最も感染率の高い国々がPEPFARの対象とされていない。これが二国間援助の問題点だ。
また、しばしば援助国が資金の使い方を指示している。被援助国の国家エイズ政策とは必ずしも照応していない。それに対し、GFATMはそれぞれの国に根ざしたプロセスを踏まえて資金を拠出する。このプロセスには事実上、全てのステークホルダーが参加できる。
PEPFARと3 by 5キャンペーンが衝突しそうな問題として、医薬品購入がある。3 by 5キャンペーンが第一次処方に使っている一錠薬は今のところ安価なジェネリック薬製造者だけが供給している。アクティビストたちは、WTOの知的所有権に関するルールを変更してジェネリック薬をもっと安価にし供給量を拡大しようとすることに抵抗している米国が、高価な米国の製薬企業の特許薬のみを使用するのではないかと恐れている。
米国の当局者は、PEPFARのガイドラインが特許権を持つ製薬企業もジェネリック薬製造企業も入札に参加できることを明記していることを強調している。しかし、PEPFARプランの別の規定を使えば、ジェネリック薬購入を禁じることができることが指摘されている。また、米国が地域間あるいは二国間の貿易協定交渉に際して、特許権尊重規定を押し付け続けていることも不安材料である。
米国の製薬企業の中には、三剤一錠薬の安全性や品質を問題視する動きもある。WHOは一錠薬の服用を認可しているが、一部の企業は、一錠薬が現行のARVへの耐性発生を促進し、薬効を奪っていると主張している。この件をめぐる調整のために今年度後半に米国とWHOの担当責任者による協議が予定されている。
資金源探し
PEPFARがあっても、途上国でのエイズ・プログラムに投じられる全ての資金は、必要額を満たしていない。しかも必要額はさらに増加していく。UNAIDSは、2004年度に少なくとも83億米ドルが必要としている。2005年度には107億米ドル、そして2007年度には150億米ドルに必要額は膨らむ。というのも、ARV治療は一生涯続けなくてはならないので、PEPFARにしても3 by 5キャンペーンにしても、年々必要額が増加していくのだ。
GFATMはさらなる資金拠出源になる可能性を秘めている。2001年にエイズ・結核・マラリアに対する国際的な取り組みを促進させていくための国際的な資金調達・配分組織として立ち上がったGFATMは、現時点でアフリカ諸国への7億5000万米ドル拠出を含め121カ国へ21億米ドルの複数年資金供与を行っていると報告している。昨年9月、リチャード・フィーチャムGFATM事務局長は、GFATMは3 by 5キャンペーンの主要な資金供与者になると語っていた。
しかし、GFATMは急速な治療プログラムの拡大に必要な数十億米ドルのプレッジを確実なものとできないでいる。カイザー財団のケイト研究員によると、技術的な問題によって資金供与がうまくいかず、2003年12月時点で1億6400万米ドルが実際に支出されているに留まっている。
GFATMの資金の60%がエイズ・プログラムに供与されているにもかかわらず、治療のために支出されているのはごくわずかである。GFATMが十分な資金を得ることができなければ、GFATMの資金でARV治療を受ける人の数は2005年末段階で24万人、3 by 5キャンペーン目標の8%を占めるに過ぎない。
世界銀行もエイズ治療・予防支援に向けてステップアップしている。
時間切れです。世銀、債務削減に触れたパラグラフ4つ分の内容は、このメールの冒頭で紹介したサイトでお読み下さい。
上記文中、PEPFARの問題点として以下の2点が明記されています。
示唆するような形で
このことは、次のことを意味しています。
また、ウガンダでは、大統領夫人がエイズ治療専門の病院を新設・運営し始めています。当然のことながらこの病院は、米国製薬企業の特許薬を「特別割引価格」で供給されて、ARV治療を実施しています。
このことは、以下の可能性を感じさせます。
一方、GFATMの「技術的な問題」とは以下のことだと考えられます。
上記2、3は、PEPFARなどにはない長所とも言えます。
また、この記事では、ビル・クリントン財団といくつかのジェネリック薬製造業者の協定が結んだことに言及がありますが、ビル・クリントン財団が途上国政府とアイルランドやカナダの政府などとの仲介者となって、PEPFARの対象となっていないアフリカ諸国でのARV治療プログラムに取り組んでいることは触れられていません。この件については、「【クリントン財団プレス・リリース】南部アフリカ諸国へのエイズ治療薬供給に追い風」をご覧下さい(若干の解説を付けてあります)。
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