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産経新聞 曽野綾子さんのコラムへの抗議文

AJFは、アフリカについて考え機会を提供し、また、必要に応じた行動を呼びかけています。


AJFは、2015年2月13日、以下の抗議文を、曽野綾子さんおよび産経新聞社・飯塚常務取締役あてに、FAXおよび郵便で送りました。

曽野綾子様

産経新聞社常務取締役 飯塚浩彦様


 『産経新聞』2015年2月11日付朝刊7面に掲載された、曽野綾子氏のコラム「労働力不足と移民」は、南アフリカのアパルトヘイト問題や、日本社会における多様なルーツをもつ人々の共生に関心を寄せてきた私たちにとって、看過できない内容を含んでおり、著者の曽野綾子氏およびコラムを掲載した産経新聞社に対して、ここに強く抗議いたします。

 曽野氏はコラムのなかで、高齢者介護を担う労働力不足を緩和するための移民労働者受入れについて述べるなかで、「外国人を理解するために、居住を共にするということは至難の業」であり、「もう20〜30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」との持論を展開しています。

 「アパルトヘイト」は現地の言葉で「隔離」を意味し、人種ごとに居住区を分けることがすべてのアパルトヘイト政策の根幹にありました。また、アパルトヘイトは、特権をもつ一部の集団が、権利を剥奪された他の集団を、必要なぶんだけ労働力として利用しつつ、居住区は別に指定して自分たちの生活空間から排除するという、労働力管理システムでもありました。移民労働者の導入にからめて「居住区を分ける」ことを提案する曽野氏の主張は、アパルトヘイトの労働力管理システムと同じです。国際社会から「人道に対する罪」と強く非難されてきたアパルトヘイトを擁護し、さらにそれを日本でも導入せよとの曽野氏の主張は言語道断であり、強く抗議いたします。このような考え方は国際社会の一員としても恥ずべきものです。

 おりしも、このコラムが掲載された2015年2月11日は、故ネルソン・マンデラ氏が釈放されて、ちょうど25年目にあたる日でした。その記念すべき日に、南アフリカの人びとが命をかけて勝ち取ったアパルトヘイトの終焉と人種差別のない社会の価値を否定するような文章が社会の公器たる新聞紙上に掲載されたことを、私たちはとても残念に思います。

 曽野綾子氏と産経新聞社には、当該コラムの撤回と、南アフリカの人々への謝罪を求めます。また、このような内容のコラムが掲載されるに至った経緯、および人権や人種差別問題に関する見解を明らかにすることを求めます。以上について、2015年2月28日までに文書でアフリカ日本協議会(AJF)へお知らせくださるようお願いいたします。また、貴社のご対応内容については他の市民団体、在日南アフリカ共和国大使館、国際機関、報道機関などへ公開するつもりであることを申し添えます。

2015年2月13日

(特活)アフリカ日本協議会
代表理事 津山直子


※ 産経新聞に掲載されたコラム pdfファイル

※ FAXおよび郵送した抗議文 pdfファイル

the Letter to Sankei-shinbun and Ms. Sono Ayako in English


13 Febrary 2013

Ms. Ayako Sono, the author

Mr. Hirohiko Iizuka, Managing Direcor, SANKEI SHIMBUN CO.,LTD

Ms. Ayako Sono’s column which appeared on the Sankei Shimbun morning edition on 11 February 2015, has inappropriate contents that cannot be overlooked. We, as an NGO which has had concerns about apartheid in South Africa and aspiration for harmonious coexistence of people with various roots within Japanese society, strongly protest against the author of the column as well as against the Sankei Shimbun for running the article.

In the column Ms. Sono, discussed the need to introduce immigrant workers who would provide nursing care for the elderly in Japan and wrote that she felt it extremely difficult to live with foreigners. She also wrote “Since learning about the situation in South Africa 20 or 30 years ago, I’ve come to think that whites, Asians, and blacks should live separately.” (Translation by Japan Times, “Author Sono Calls for Racial Segregation in Op-Ed Piece,” 12 February 2015)

“Apartheid” means “separation” in the local language of South Africans. Separating residential areas according to race was the foundation of apartheid policy. Apartheid was also a labor force management system, in which the privileged race deprived other races of their rights by using them as convenient labor. At the same time this privileged race did not let these races remain in their own areas. Arguing for a separate residential area for immigrant workers, as Ms. Sono does, is synonymous with calling for an apartheid system in Japan. It is abominable to defend apartheid, which has been strongly condemned by the international community as a “crime against humanity”, and to argue for introducing a similar system in Japan. We strongly object to this opinion. It is a shameful act to express such views as a member of the world community.

Coincidentally, the day the column run, 11 February 2015, was a 25th anniversary of the late Mr. Nelson Mandela’s release from the prison. It was very disappointing that we had to find, on this memorable day, a column which negates the significance that South African people fought, risking their lives, for the end of apartheid and the realization of society without racial discrimination.

We demand Ms. Sono and the Sankei Shimbun retract this column and apologize to the people of South Africa. We also demand an explanation regarding the process in which the column went to press, and your view on human rights and racism. Please send us your written response to Africa Japan Forum (AJF) by 28 February 2015. Please be advised that we intend to inform other NGOs, the South African Embassy, international organizations, and various media companies of any response we receive from you.

Tsuyama Naoko
President
Africa Japan Forum

* PDF file download

産経新聞社村雲広報部長名書簡


2015年2月23日、産経新聞社より村雲広報部長名で書簡が送られてきました。内容は以下の通りです。

特定非営利活動法人アフリカ日本協議会
代表理事 津山直子様

謹啓 向春の候、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 このたびは産経新聞に掲載した曽野綾子氏のコラムにつきまして、文書をお寄せいただき、拝読させていただきました。
 ご指摘いただいたコラムは曽野綾子氏の常設コラムであり、労働力不足と移民についての曽野氏ご本人のご意見をひとつの見解として掲載いたしました。コラムについて、さまざまなご意見があるのは当然のことと考えております。特定非営利活動法人アフリカ日本協議会様から寄せられたご意見、ご批判は真摯に受け止めており、曽野氏にもお伝えさせていただきました。
 2月15日付の産経新聞の紙面に掲載した通り、私ども産経新聞は、一貫して、アパルトヘイトはもとより、人種差別などあらゆる差別は許されるものではないとの考えです。
 曽野氏は長年にわたり、人道支援活動などで南アフリカをはじめアフリカ諸国を何度も訪ね、現地で生活する人々と深く交流し、多くの方の話を聞いておられます。コラムはこうした曽野氏ご自身の体験から、生活習慣の違う人同士が一緒に住むのは難しいという個人の経験を書かれたものと受け止めております。もちろんアパルトヘイト政策を日本で行うよう提唱したものでは断じてありません。
 ただ、このコラムを掲載したことで、不快な思いを抱かせてしまったことは、私たちの望むところではなく、大変遺憾に感じております。抗議文をいただいた南アフリカのモハウ・ペコ駐日大使にも、こうした考えを伝えさせていただきました。
 繰り返しになりますが、産経新聞社はアパルトヘイトや差別は決して許されるものではないとの考えです。今回のご指摘を真摯に受け止めるとともに、感謝申し上げ、今後の紙面づくりに活かしていく所存です。

                                謹白
2015年2月20日
                         産経新聞社広報部長
                              村雲克典

※ 上記書簡 pdfファイル

産経新聞社村雲広報部長名書簡、曽野綾子さん返信


2015年2月27日、産経新聞社広報部から、「曽野氏にもお伝えいたしましたところ、返信を預かりました」と封書が送られてきました。

アフリカ日本協議会 津山直子様

謹啓 向春の侯、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 このたび産経新聞に掲載した曽野綾子氏のコラムにつきまして、お寄せいただいた文書を曽野氏にもお伝えいたしましたところ、返信を預かりましたので送付させていただきます。よろしくお願い申し上げます。
                              謹白
 2015年2月26日
                        産経新聞社広報部長
                             村雲克典

 戦前の日本にさえ、出自や学歴に関係なく、有能な人材に働いてもらいたいという希望は色濃くありました。日本にはそれほど強固な能力主義の歴史があります。もちろん一つの国は一枚岩ではありません。しかし多くの企業家も学者も作家も、個性豊かな人物が、近代の日本を創りあげて来たことを、感動をもって認めて来ました。こうした個人判別は差別ではなく区別です。私もまた作家として、常に区別なしには書くべきテーマの発見もできません。区別は学問、芸術、政治、哲学などのすべての分野の基礎の大地です。差別などで人や現象を分けていたら、一篇のまともな小説も書けないでしょう。
 しかし文化には、自然に特微があります。アジア系の人々は米と魚を多く食べます。ヨーロッパに住む人たちは、小麦のパンと、牧畜の成果による肉を食べます。歴史的に、中東には一神教が生まれ、アジアには多神教の世界が出現しました。私はこうしたきわめて自然で人間的な習慣や嗜好を、その人たちのために存続したい、という素朴な願いはずっと持っています。
 私は小説家です。小説は日本語では小なる説という意味です。つまり一人一人の思いを掬いあげて、優劣や善悪を単純に考えて裁かず、大切に書き留める仕事です。その内容は私―人の考えで、他者や他の団体を代表するものではありません。アパルトヘイトを私は推奨したことは一度もありません。南アフリカで不幸な結果をもたらしたその制度は、日本には幸いなことにありませんでしたから、推奨する理由が全くありません。
 しかし違う生活習慣の人たちの幸福を増す目的のために、異なった暮らし方がその人の社会生活の一部で許されていいと、今も考えていますが、それが南アで行われたようなアパルトヘイトを認めることだ、などという飛躍した発想になるのは、むしろそう考える人たちの悪意です。
 南米の日系移民の中には、生涯スペイン語を話せないままの妻もいます。こういう夫婦に子供がないと、その老妻は夫の亡き後、誰も通訳をする人が身近にいませんから、買い物もできず書類も作れません。その国の老人ホームに入ると話相手もありません。
 現地の日系2世のカトリックの神父の要望もあり、私は40年間働いた小さなNGOでペルーに日系だけの老人ホームを作ったことがあります。これで日本語しか喋らないおばあちゃんたちも、毎日友達と会話を楽しみ、和食を食べ、日本の歌をカラオケで歌えるようになりました。
 日本の大手ゼネコンは、過去には外国に対する知識の不足から、いくつかの失敗をして軽い文化摩擦を起こした例もあったようです。しかし今では海外で工事をする時、外国からやって来る労働者に対して、できる限りの繊細な配慮をしています。東南アジアの場合、宗教も習慣も違う出稼ぎの人々のために、現場宿舎を国別に分けて建てることも、過去の経験から出た一つの配慮でした。
 まず、イスラム教徒が多い場合には、何よりモスクの建設が大切です。東南アジアでは、牛肉を食べないヒンドゥ教徒、マレーシアやインドネシアに多い豚を食べないイスラム教徒、その他仏教徒、日本人のように神道もいます。たまにはユダヤ教徒もいるかもしれません。それらの人たちが、ハラルやにコーシャーと呼ばれる食事規定を守るためには、厳密に台所も別にしなければなりませんから、国別の宿舎を作る方がその人たちも安心だったのです。それらは違う文化を尊重し、働く人たちの心の安定と、日常の便利さと、友が近くにいるから寂しくないという幸福感を、むしろ増やすための配慮の結果であって、差別とは全く方向が違います。
 しかもそれらの棲み分けには、法律による立ち入り禁止や、特定の住居に入れという強制力もなく、それらを守らなくても一切の罰則はない、いわば完全な開放と居住の自由を原則にした選択の結果です。
 どこの国にも、同じ外国に生まれた人が集って住む、自然発生的な特別な地区はあるものです。しかし現在の日本には、宗教的な対立もなく、ましてや人種の差別など見たこともありません。あくまで能力主義が基本です。私は他のお国がなさることを理解しようとは努めますが、それを改変させるような無礼は考えたこともありません。その無力さの意識が、小説家の魂の自由の保証です。ましてやアパルトヘイトの制度を、必要もなく日本が自国に取り入れるつもりか、などという解釈の飛躍は、私には全く理解できません。
 なお世界の名だたる新聞社・通信社に言います。
 私は現在、安倍総理のアドバイザー的な一切の立場にありません。ジャーナリズムの取材の原則は、こうした些事も、別個に確認の上で正確にお書きなることです。
2015・2・25
                             曽野 綾子

※ 上記返信 pdfファイル

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