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アフリカにおける「飢えている人々」の規模

2008年に発行した『アフリカの食料安全保障を考える』をウェブ化しました。

飢え(1)(Hunger)とは何か

1996年にローマで、FAO(国連食糧農業機関)の主催による世界食料サミットが開催され、2015年までに世界の飢餓人口を半分にするという約束を表明した。これはUNDP(国連開発計画)が設定したMDGs(国連ミレニアム開発目標)で表明されたものと同じものである。

人が何をどう食べているかを知ることは、食料問題への接近の第一歩であろう。世界の各地で、人々は実にさまざまな食事を消費している。日本や東アジア、東南アジアのようにコメ中心の国もあれば、ヨーロッパ、中東、中南米のように小麦が最重要の地域もあり、また熱帯アフリカやメキシコのように、トウモロコシが主食として重要な地域もある。またミレット、ソルガムなどの雑穀、キャッサバ、ヤムイモ、サツマイモ、ジャガイモなどのイモ類、料理用バナナなどが多く消費されているところもある。豆類にもいろいろな種類がある。食料生産を考える際には、このようなさまざまな食用農産物について知る必要がある。

しかし飢えということを中心に考えると、重要なのはどれだけ食べているかということである。さまざまな内容の食料の消費量を比較するためには、それらに共通する測定尺度を使うことが必要になる。このために最も広くもちいられているのは「食事エネルギー量」、つまり1人1日何カロリーを消費しているのかという指標である。これを知るには世帯を単位とする家計消費支出調査があればそれを使うが、それがない場合が多いアフリカ諸国の場合は、この計算を出すためには、普通「食事エネルギー供給量 ( DES )」を国ごとの「食料需給表」を使って算出する。この場合は、年間の国内食料生産に輸入食料を足し、在庫変化を加え、それより種子、飼料、減耗、輸出食料分などに使われた分を差し引き、国内食料供給量を出す。これを品目ごとにカロリー換算し、人口と365日とで割って、1人1日あたりの食事エネルギー供給量を得る。こうして出された数値は大変大雑把なものであるが、見当をつけるのには必要な数値である。

発展途上国では、7億9,900万人、つまり世界人口の約18%が飢えているといわれる。南アジアでは4人に1人、サハラ以南アフリカでは3人に1人に達している。インドは一国で2億3,300万人という最大の飢え人口をかかえ、サハラ以南アフリカでのそれは1億8,300万人といわれている。最近発表になった最新(2000~2002年)の数字では、飢え人口は8億5,200万人に増えている。

そして飢え人口とは、食事エネルギー摂取量が必要量に足りない状態で生きている人びとの数のことである。必要量とは、個人が健康を保ち、社会活動を可能にする最低限のエネルギー摂取量のことである。1996年のFAOによる世界食料調査では、この水準以下の人口を、食料不足人口と呼んだ。最近ではこれを栄養不足人口と同一視している。

食事エネルギー摂取量が必要量を充たしているかどうかを判定するための一つの基準としてBMR ( Basal Metabolic Rate 、基礎代謝率) という考え方が用いられている。BMRとは「温かい環境下で食事もとらない完全な休止状態にある個人のエネルギー消費量」、つまり人間がただ生命を維持するだけのために最小限必要な食事エネルギー量のことである。実際に人間が生活していくためにはただ寝ているだけではだめなので、エネルギー消費量は、もちろんBMRよりずっと多い。FAOによって栄養不足の限界値として用いられているのは、その1.54倍すなわち1.54BMRである。BMRは個人の体重に大きく依存しているが、基準となる体重としては、身長統計から推定された最小限の望ましい体重が用いられている。BMRは成長期にある子供には適用できない。そのために10歳以下の子供については、BMRとは別に、体重1kgあたりの食事エネルギー必要量が用いられている。

発展途上国では、住民の体重などの統計が取れず、BMRを出せないので、貧困計算に使われるものと同じであるが、便宜的に体重65kg の成人男性が気温10度の環境で必要な活動エネルギー消費量1人1日3,000kcalを基準として使い、それに性別・年齢別の格差表を用いて家族員全員の食事エネルギー必要量を出し、それを最低線としている。この格差表では、例えば男女共に4歳の子供の必要エネルギー量は1,500kcalになる。

栄養状態の測定

最近の国連文書では、栄養不足の測定をカロリー摂取量の推計だけによって行なっており、これをまた食料不足と同義語として用いている。そして栄養不足と栄養不良という二つの言葉を使い分けている。栄養不良という場合は、個人の生理的状態の悪い状態を意味し、それは摂取カロリーだけではなく、蛋白質摂取や基本的ビタミンおよびミネラルなどの微量栄養素不足、種々の病気、保健衛生や介護の欠如などによって起こるものである。発展途上国では、このような問題をもたらす要因を計るのではなく、結果としての悪い身体の状態を測定し、これに基づいて栄養不良人口を測定している。この方法を人体測定法という。これは主に子供に使い、3項目についての測定が使われることが多い。最近は成人にも使われる(項目1を用いる)。

(測定項目1)衰弱:身長に比べて体重が少ないこと。一般的には、飢えまたは重病の期間の終わりに関連した体重減少の結果である。測定基準として使われるものにBMI(2)があり、BMIが18.5に満たない成人は、慢性的栄養不良と判断される。
(測定項目2)身長不足:栄養不足期間の持続の結果、年令のわりに身長が低いこと。比較人口の平均値より下方偏差値が2以下の身長の者は、栄養不良と判断される。
(測定項目3)体重不足:食料摂取の不足、過去の栄養不足あるいは健康状態の悪さが原因となって生じた、年令の割りに体重が少ない状態。比較人口の平均値より下方偏差値が2以下の体重の者は、栄養不良と判断される。

飢えを削減するための方策

飢えを削減するためにFAOは、次の方策を提唱している。

(A) 食料生産量の拡大のために、
 (1) 農業生産性を向上させる技術の強調(とくに土壌の肥沃度を上げる)。
 (2) 農業へのより多くの資金の投入。
 (3) 自然環境の悪化の防止。
 (4) より平等な資源(土地など)の分配。
 (5) 富裕国が課す農業関税と補助金を下げる。

(B) 農産物流通の整備と価格安定のための食料緩衝在庫の維持のために、
 (1) 食料価格の高騰を防ぐ制度整備。
 (2) 飢饉の拡大を防ぐための配給制度、あるいは働くための食料支給プログラム(Food for Work)の活用。
 (3) 市場を利用しやすくするインフラ整備。

一方、地元住民のエンパワーメントにより飢えを削減するためには、次の方策が考えられる。
(1) NGOなどが強調する住民組織強化により、在来技術を見直し、あわせて新技術の導入を図る。
(2) 住民相互の助け合い(social networking)による安全保障の実現。
(3) 旱魃などのリスクを受けやすい地域を特定し(リスク・マッピング作成)、危機にさいしては、行政の迅速な対応を確保できる仕組みをつくる。
(4) 女性の教育水準、権利の向上により、世帯の所得増大、衛生状態の改善、配分の公正化を図る。

・内戦中に家畜を軍隊に徴収されたため、家畜数がきわめて少ない
・果樹の回りに地雷を埋められたため、果樹のある土地に戻れなくなった住民も多い
・したがって、農家は今年の食糧を生産するのに精一杯で、いざというときに処分できるような流動性の資産(ストック)(預金、家畜、果樹、余剰穀物等)がほとんどない
・内戦時に戦火を避けて居住地を転々と変えたため、居住村落としての歴史が浅く、まとまりが弱く(リーダーの力が弱い)、家族も核家族化しており(老人世帯、女性世帯主の世帯が多い)、地縁・血縁による伝統的な相互扶助機能が弱い(「社会資本」の少なさ)
・内戦の経験から外部者(ドナー、政府、NGO、他村落等)に対する警戒心・不信感が強く、容易に人を信じない傾向がある(外部主導による住民参加、組織化の難しさ)

【注】
(1) 日本語では通常は「飢餓」という言葉が使われるが、これは極端な飢え ( Starvation ) に近い意味なので、ここでは「飢え」という言葉を使う。
(2) BMI=体重/身長の2乗。この数値が18.5以上25未満の場合が標準になる。

【参考文献リスト】
朽木昭文ほか編、1997、『テキストブック開発経済学』、アジア経済研究所(有斐閣)
絵所秀紀、山崎幸治編、1998、『開発と貧困』、アジア経済研究所
アマルティア・セン,2000、『貧困と飢饉』、岩波書店
荏開津典生、1997、『飢餓と飽食』、講談社
FAO、1997、『世界各国の栄養状態/第6回世界食料調査』、国際食糧農業協会
L.デローズ、E.メッサー、S.ミルマン、1999、『誰が飢えているか』、国連大学出版局(清流出版」
FAO , (1999) , The State of Food Insecurity in the World , Rome , FAO
UNDP、(2003)、『人間開発報告書2003』、国際協力出版会(古今書院)

JAICAF/世界の栄養不足人口−ハンガーマップ2010 http://www.jaicaf.or.jp/fao/world/FAO_10Wn_Map_Mihiraki.pdf

JAICAF/世界の食事エネルギー摂取量 http://www.jaicaf.or.jp/fao/world/2006_dec.pdf

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